期限の利益喪失約款がある場合は、みなし弁済が成立しないという判例。

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過払い金返還請求の裁判例

~ みなし弁済の要件を満たすか(期限の利益喪失約款) ~

平成18年1月13日最高裁第二小法廷判決

■ 問題点&争点

利益喪失約款(約定返済を遅滞した場合、期限の利益を喪失するという内容の契約条項)がある場合に、支払の任意性は認められるのかが問題となりました。

■ 判決要旨

債務者が、事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。

本件期限の利益喪失特約がその文言どおりの効力を有するとすると、上告人Y1は、支払期日に制限超過部分を含む約定利息の支払を怠った場合には、元本についての期限の利益を当然に喪失し、残元本全額及び経過利息を直ちに一括して支払う義務を負うことになる上、残元本全額に対して年29.2%の割合による遅延損害金を支払うべき義務も負うことになる。

このような結果は、上告人Y1に対し、期限の利益を喪失する等の不利益を避けるため、本来は利息制限法1条1項によって支払義務を負わない制限超過部分の支払を強制することとなるから、同項の趣旨に反し容認することができず、本件期限の利益喪失特約のうち、上告人Y1が支払期日に制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとする部分は、同項の趣旨に反して無効であり、上告人Y1は、支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払いさえすれば、制限超過部分の支払を怠ったとしても、期限の利益を喪失することはなく、支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り、期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。

本件期限の利益喪失特約は、法律上は、上記のように一部無効であって、制限超過部分の支払を怠ったとしても期限の利益を喪失することはないけれども、この特約の存在は、通常、債務者に対し、支払期日に約定の元本と共に制限超過部分を含む約定利息を支払わない限り、期限の利益を喪失し、残元本全額を直ちに一括して支払い、これに対する遅延損害金を支払うべき義務を負うことになるとの誤解を与え、その結果、このような不利益を回避するために、制限超過部分を支払うことを債務者に事実上強制することになるものというべきである。

したがって、本件期限の利益喪失特約の下で、債務者が、利息として、利息の制限額を超える額の金銭を支払った場合には、上記のような誤解が生じなかったといえるような特段の事情のない限り、債務者が自己の自由な意思によって制限超過部分を支払ったものということはできないと解するのが相当である。

■ 判決のポイント

期限の利益喪失約款がある場合は、特段の事情のない限り、任意性は認められないので、みなし弁済は成立しないと判示されました。消費者金融の契約書には、返済予定日に返済を怠った際には、遅延利息の付加や残金一括返済の請求を可能とする「期限の利益喪失特約」の記載が必ずありますので、本判決によって、実質的に貸金業者の「みなし弁済(貸金業法43条)」が認められることはなくなりました。